その1. 朝湯は怖い!!

今から10年くらい前でしょうか。取材先の宿に宿泊し、美味しいご飯を食べて、夜はのんびり温泉に浸かりました。人がいないところで、大浴場の写真も撮りました。冬の時期なので湯気がもうもうとしていて大変でした。食事も部屋も館内も、そして浴場の撮影も終わりホット一息。後は、翌日の朝風呂を撮影するだけでした。

朝は早めに起きて、朝の大浴場に向かい再び写真撮影です。タイミング良く誰も入っておらず、換気をして湯気を追い出しましたが、10分ほどしても完全には抜けきれませんでしたが、「この程度ならまあいいか」と思い、シヤッターをパチパチ。比較的湯気の少ない洗い場から全体を撮り、後はズームで湯口などを撮りました。湯口には袋のようなもの揺れており、「漢方薬を入れた袋だな」と思い思いっきりズームで撮影しました。

撮影が終わって朝食会場に向かったところ、年配のグループの方たちがいて、その内の何人かが「◯◯さんは知らんかね」「◯◯さんはどこに行ったんやろか」「さっきまで部屋におったけど、朝早くに出ていったよ」「まあそのうちくるじゃろ(広島の宿でした)」と話していましたが、みんな席で朝食を取り始めました。私もバイキングの朝食をゆっくり食べて満足していました。

朝食会場から出ると、先程まで話していた◯◯さんのことで、数人が心配そうにしていました。その時誰かが「そういやあ、〇〇さんは朝風呂に行くとか言うとった。それから見てないき、風呂場に行ってみたけど誰も入ってなかったが…」私も「先ほど風呂場を撮影していたけど、どなたも入ってなかったですよ」と仲間に入り、みんなで手分けして館内を探しました。もう一度風呂場に行きロッカーをふと見渡すと、キーがないロッカーが1つありました。服を脱いでロッカーに入れてから、キーを身に付けてお風呂に入ります。私がそのことを一緒に来た人に話しながら、嫌な予感が頭をよぎりました。

数人でフロントに向かって、ロッカーのスペアキーを借りて開けてみると、浴衣や下着などが入ったままでした。私は急いで湯船に向かい、湯気でもうもうとしている中、湯口にあった薬草を入れる袋の近くに行くと思わず絶叫しました。それは人が背中を上にしてプカプカ浮いていたのです。3人がかりで洗い場に引き上げました。「◯◯さん!!」

15分くらいするとピーポーピーポーと鳴らしながら救急車と、カンカンと鳴らしながら来た消防車が到着しました。館内は慌ただしくなり、私は呆然と眺めるだけでした。その後、救急車が帰り消防車だけが残っていました。もう亡くなっているのが確認できたのか、袋に入れた遺体を消防車に積んで帰っていきました。

私は皆さんからお礼を言われましたが、生存は判りませんがもっと前に、撮影しているときに気付いていれば、と悔やまれました。今もその写真は残ったままです。

私は、朝風呂で亡くなられた人に出会うのは、これが初めてではありませんでした。以前も朝風呂で亡くなられ、朝から旅館内が騒然としていた場面に遭遇しています。特に空腹時や寒い日の朝風呂は要注意です。特にご年配の方はしっかりしかけ湯をして、浴槽で体が温まってからは、急に立ち上がるのはやめましょう。私は今もそのぷかぷか浮かぶ袋が頭から離れません。

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onsen

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